「発想力はトレーニングによって、後天的に身に付けることができる。」
これは本書の一節で、「発想力がない。」と悩んでいるビジネスマンにとっては、勇気づけられる言葉です。
でも、「発想のトレーニングをしてみよう!」と意気込んだところで、何を、どのようにトレーニングしていいのかが分からない人が多いと思います。
そんな人にオススメなのが本書です。
本書では、この発想のトレーニング方法として、
①戦略的自由度 ②アービトラージ ③ニュー・コンビネーション ④固定費に対する貢献 ⑤デジタル大陸 ⑥早送りの発想 ⑦空いているものを有効利用する発想 ⑧中間地点の発想 ⑨他人の立場に立つ発想 ⑩すべてが意味すること ⑪構想
の11項目の軸にそって、解説してあります。
この中でも、最もビジネス思考の鉄板とも言えるのが、①戦略的自由度と思います。
戦略的自由度という発想
戦略的自由度とは、ユーザーの目的を満足させる方法をできる限り多く抽出し、その中から戦略的優位になり、かつ持続できる方策をとることです。
戦略的自由度の3つのステップ
- ユーザーが何を求めているかを問う。
- ユーザーの求めに応じるために、どんなやり方があるかを考える。
- ユーザーに対して、何ができるのかを考える。
戦略的自由度が欠如していたシャープ
技術的に優れていても、ユーザーから見た時に差を感じられなければ、それは「差異」ではないのだ。
この言葉は、全てのビジネスにおいて、決して忘れてはならない鉄則です。
この鉄則を無視したために窮地に陥ったのがシャープです。
ご存知のとおり、シャープは液晶テレビ「亀山モデル」でリーディング・カンパニーとなりました。しかし、2008年のリーマンショックを境に状況が一変し、経営危機に陥りました。本書によると、一気にシャープが傾いていった理由は、冒頭の一節の言葉の意味をシャープが理解していなかったからだそうです。
技術陣は、「ウチの液晶は、サムスンの液晶よりこういうところが優れている。」と胸を張ります。しかし、ユーザーから見れば何が優れてるのかよく分からない。
つまり、ユーザーからみれば、それは「優れている。」ということにならない。結果、売れないということになります。
企業の戦略での失敗は、ほとんどがこのようなユーザー目線の欠如から生まれているように思います。
戦略的自由度をココロに刻む
飲食業であれ、美容業であれ、全てのビジネスにおいて、決して忘れてはならないのは、この戦略的自由度という発想と思います。
ただ、職人肌の人ほど、「自分はこうしたい!」と考えてしまいます。
でも、自分がしたいことはお客様には関係なく、「お客様の満足」が全てなんですね。
本当に、この発想は意識しないと欠如してしまうので、毎日ココロに刻むようにしたい。
最後に。
本書では、戦略的自由度という発想以外にも、たくさん発想トレーニングの軸が紹介されています。
この軸に沿ってトレーニングをしていけば、必ず、1年後には違った世界が見え始める。そう確信させられる1冊です。